軍艦アパート未発表作10
「7号棟から8号棟を望む」
軍艦アパートの特徴である出し屋は、古い年代に作られたと思われる色あせた物件をみると、ある程度の規格性が感じられたから、手作りではなく正式な大工仕事だったと思われる。
とくに大きく張り出した出し屋は、一階が二階を、二階が三階を支えるような構造になっていたりするが、そういう力学的な法則を無視した大胆な出し家もあって、大阪弁なら「これ、ええかいな?」と叫んでしまいそうになる。
しかし、たいていの出し屋はこじんまりとささやかで、ひとことで言うと「かわいらしい」。このかわいらしい一戸一戸に灯りが点り、たくさんの家族がわいわいと暮らしていた頃を思うと、なぜだかほほえましい。
奥に煌煌とみえるマンションの清潔なたたずまいは、あまりにも対照的だが、昔ほどの子だくさんは減ったとはいえ、いまも変わらぬ営みの場所である。
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