« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »

2007年11月22日 (木)

軍艦アパート未発表作9

_mg_3485

「7号棟と8号棟」

7号棟と8号棟の隙間は、建て増しによって人ひとり抜けるのがやっとの狭いスペースとなっていた。こうやって2〜3階部分をみても、両側から迫り出した「出し屋」でわずかな隙間しかないのがわかる。

とくに角の部屋であることを利用した大胆な施工には驚かされるが、実際この部屋をどのように利用していたのだろうか。割合しっかりした普請だが、あんまり重量物は置けないだろうし、子供部屋にしたとしても、ここで寝るのはちょっとこわい。ただし、この出し屋が脱落した事故というのは聞いたことはない。

これを撮ったのは、もう2年前で「サヨナラ軍艦アパート」の撮影スタイルが固まる以前である。もともとハッセルで撮っていた夜景のシリーズにつなげようとして、試行錯誤した時期であった。この写真が縦位置であり、上の空間が空いているのは、当然スクエアへのトリミングを想定していたものだった。

HDRI作成については、最初は普通にオートブラケットしていたものをコンポジットしたものだったが、輝度差の激しい光景だと満足な結果が得られず、やがてその段数は増えていった。

あの頃の出来事が、つい先日のように感じてしまう。こんな魅力的な被写体はもう見つからないが、感傷にひたっている暇はない。今週も、いつか撮ろうと思っていた建物が消えて無くなっているのがわかり、ショックを受けた。この冬は、そんな物件のいくつかを追いかけていきたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月14日 (水)

軍艦アパート未発表作8

_dsc_0078

「2号棟および8号棟」

この写真は、新宿展では使ったかもしれないが、大阪展では使わなかった。他と色みが違うのは、これはNikonD50とPC-Nikkor35mmで撮ったからだった。

この交差点は定点的に撮ったが、夜でもやたら交通量が多いうえに信号のサイクルが25秒くらいしかない。信号が変わったり、車が通ったりするたびにイライラしながら撮影したのを覚えている。結局、車が減る夜10時を過ぎないと撮り終わらないので、帰りの時間にはいつも焦った。

今思えば、夜通しすればもっとたくさん撮れたのだが、その年の冬はあまりにも寒かった。寒いうえに怖いので、夜通しなんて考えたこともなかった。どちらかといえばさっさと切り上げて、早く帰りたいと思いながら撮っていたものだった。

そんな状況だったので、撮影に本腰が入ったのは、閉鎖される直前だった。75年分の澱がどっと噴き出し、漂う毒気にあてられたかのように、夢中で撮ったのを覚えている。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »