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2007年9月15日 (土)

軍艦アパート未発表作3

Mg_6371

「8号棟北面」

スラム地区にこつ然と建った鉄筋3階建ての市営住宅には当初、この地区の人々が入居した。

今からみれば、すごく狭くて内風呂すらない団地だが、イタリア人が設計したという集合住宅は革新的で、電気・ガス・水道はもちろん、水洗便所やダストシュートをそなえていた。ただし、これまでスラムで暮らしていた住人には、その使い方がよくわからない。

おそらくは、まともなインフラもなく、井戸水などを汲んで炭や薪で湯を湧かしていた人たちである。とくにガスの利便性には目を見張ったに違いない。どんどん消費したあげく、翌月の支払いに目を剥いたという。用便の度に水を流さねばならないのはもったいないし、ダストシュートは、たちまち生ゴミが詰まって悪臭を放った。幸い、ガスを使わなくてもカマドで焚き付けることができたが、白亜の建物は、またたくまに煤けていった。

初期の段階で、「近代生活」に馴染めない人たちがかなり退居していったようだ。しかし、まもなく始まった大東亜戦争の末期、空襲によって焦土と化した市街で、鉄筋コンクリートの軍艦アパートはなんとか焼け残った。住人の命や家財を守るという、もっとも大切な役目を果たしたのである。

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コメント

全ての住居には歴史がきざまれていると思いますが、
こうして解説を読むと特異な性質が偲ばれてとても面白いです。
同じ建物で全ての窓の有様が違う…。
当時の、今よりももっと赤裸々な「生活」が見えて面白いと思います。
生きる事のエネルギーを感じさせてもらいました。
続きを楽しみにしております。

投稿: TOOLKIT | 2007年9月17日 (月) 00時27分

TOOLKITさんこんばんは

ほんとに歴史の重なりが感じられる建物でした。
住民もいろんな方がいて思い出に残っています。
また、ぼちぼちアップしていきたいと思います。

投稿: なかひがし | 2007年9月18日 (火) 20時49分

中東さま、はじめまして。
アサヒカメラ等で中東さまのご活躍は拝見させていただいておりましたが、今日こちらのブログを発見して失礼ながらコメントさせていただいております。
「軍艦アパート」素晴らしい写真の数々であることはもちろんですが、こうして未公開の作品をWEB上で見ることができ、また、中東さまのご意見まで読むことができ感激ひとしおです。
私も稚拙ながらハッセルやデジカメで夜の建造物を取ってみることがありますが、今回こちらのブログを拝見させていただいて、改めて写真家とは一つの確固たるテーマをもちその意味を問う作品を取り続けるという行為の大切さ、凄まじさを体験させていただきました。
写真がありテーマがあるのか、テーマがあり写真を撮るのか?自分自身にとって大きく考えさせられる事となりました。
ありがとうございます。
今後も本ブログに立ち寄らさせていただきたいと思います。がんばってください!

投稿: SONE | 2007年9月18日 (火) 20時54分

SONEさん、はじめまして

DiaryやWeb写真界隈に掲載した記事などを見ていただくとわかりますが、私の写真はイメージを具現化するための技術的な考察からのアプローチが大きく占めており、テーマ性というのはきわめて希薄なんです。
一見、社会的なテーマをまとっているように見えますが、大義はなく、内的な「美」のイメージの追求、好奇心があるのみです。

そちらのHPも良い作品がたくさんですね。私も猫好きですが、猫の写真はまともに撮れたためしはありません。

おたがいにがんばっていきましょう。

投稿: なかひがし | 2007年9月18日 (火) 23時30分

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